再建築不可でも、建て替えを制限されている理由を取り除くことで、建て替え可能にできるケースがあります。全ての土地に対して有効ではありませんが、その方法を5つご紹介します。
隣の土地と合筆する
隣接した二つの土地を一つの土地として登記することを合筆と言います。隣の土地が接道義務を満たしている場合、その土地を買い取って合筆すれば、もともと再建築不可の土地も再建築できるようになります。
隣地の所有者が土地の売却を計画しており、かつ買い主の資金に余裕がある場合に限りますが、再建築できるようにする方法としてはもっともシンプルなものです。
通常、土地の売買は仲介業者に依頼して行われることが多いです。売買契約には以下の準備が必要となります。
売り主側
- 売買契約書
- 身分証明書
- 実印・印鑑証明書
- 住民票
- 建築確認済証および検査済証、建築設計図書・工事記録書等
- 土地測量図・境界確認書
- 固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書
- 登記済権利書または登記識別情報
買い主側
- 住所証明書類(住民票)
- 写真付き身分証明書
- 実印・印鑑証明書
- 登録免許税(不動産の登録にかかる税金 対象不動産評価額の1000分の2)
各書類の準備は仲介業者に相談してからでも問題ありませんが、売買を急ぐ場合は事前に準備できるものを揃えておけば、手続きもスムーズに進めることができます。
隣地の一部を借りて接道義務を果たす
土地の買取が難しい場合は、隣地の一部を借りることもできます。隣地を丸ごと売買する場合と違い、貸借契約は両者の合意によって解除することができます。借りる土地も接道義務を満たす分だけなので、隣地所有者の負担や心理的ハードルも低いです。
貸借契約を結ぶ場合、必要書類は以下の4種類となります。
- 賃貸借契約書
- 身分証明書
- 実印・印鑑証明書
- 土地の登記簿謄本
こちらも、仲介業者や司法書士などの専門家に依頼するのが安心ですが、自分で手続きすることも可能です。交渉がスムーズに進んだ場合、話し合いから契約締結まで最短一週間ほどとなります。
土地の一部に位置指定道路としての認定を受ける
位置指定道路は、建築基準法42条第1項第5号に規定されている私道の一種です。敷地の一部を道路として工事することで、市区町村の建築担当課から認定を受けて接道義務違反の状態を解消できます。
建築基準法に定められている位置指定道路の基準は、以下の通りです。
- 道幅が4メートル以上になるようにし、道路との接続部に隅切りを設置する
- 道路の形態とその境界が明確であり、排水設備があること
- 通り抜けが可能であること
- 行き止まり道路の場合、長さが35メートル以下であること
参照:電子政府の総合窓口 e-GOV|建築基準法42条1項五号
隅切りは、右左折時の安全確保や進入時の衝突防止のために、道路の角を斜めに切り取り視界を確保することです。隅切りを行なった道路は入口がカクテルグラスのような形になります。
建築基準法の規定の他にも、自治体ごとに独自の運用基準が存在する場合があるため、位置指定道路の認定には申請前に市区町村の建築課への相談が必要です。便利な制度ですが、中古一戸建の土地としては大きな面積を負担しなければならず、敷地いっぱいに家が建っている場合は採用されないことが多いです。
43条但し書き道路の認定を受ける
43条但し書き道路とは、4メートル以下の幅員の道路に接している場合でも、一定の基準のもと例外的に再建築を認めるという建築基準法の規定です。
詳細は、建築基準法施行規則第10条の2に規定されており、以下のどれかに適合していなければなりません。
- 敷地の周囲に公園・緑地・広場等の広い空き地が存在すること
- 農道などの公共の道(幅員4メートル以上のものに限る)に2メートル以上接道すること
- 道路に通じており、避難・通行の安全が確保できる十分な幅を持つ道に有効に接すること
参照:電子政府の総合窓口 e-GOV|建築基準法43条
参照:電子政府の総合窓口 e-GOV|建築基準法施行規則第十条の二
以上の基準を満たし、建築審査会の許可が降りれば再建築が可能となります。
しかし、現在まで建築の許可が出ていない物件は、現実的には認定を受けるのは難しいと考えられます。43条但し書きは、ご紹介したように認定のための基準が厳しく、実質的には建築基準法上の道路と同レベルの環境が求められるためです。
また、時間の経過も理由の一つです。建築基準法が定められた昭和25年から、2019年現在で既に60年以上経過しています。許可の可能性のある土地なら、既に以前の持ち主が売却前に許可申請をおこなっていると考えられるためです。
現実的には認定は難しいですが、手段のひとつとして頭の片隅に留めておいてください。
セットバックする
セットバックとは、道路の幅を広げるため、接している土地の境界を後退させることです。
建築基準法の施行前に作られた幅4メートル未満の道は、行政から指定を受けた場合、建築基準法上の道路とみなす例外規定があります。このルールは建築基準法第42条2項に規定されているため、建築業界では「二項道路」と呼ばれています。
二項道路に面している住宅は、道幅が4メートルになるよう敷地をセットバックさせれば再建築が可能となります。
道路によって元の幅が異なるため、セットバックする面積はケースによって異なります。基準は以下の表の通りです。
道の状況 | セットバックする面積 |
---|---|
道の反対側に家が建っている | 道の中心線から敷地までが2mになるように後退させる |
道の反対側が住宅ではない | 道の反対側から敷地の境界までが4mになるよう後退させる |
セットバックすると、所有していた敷地を道路として市区町村に提供することになります。敷地の面積が小さくなり財産評価も変動するため、セットバックを検討している場合は一度不動産会社に相談し、セットバックする前と後で、どの程度得をするのか、また損失が出るのか確認してみるといいでしょう。